青に透けた肉塊

君は変人に憧れている常識人だった。

140-2

「石-1」

その二千円のシャドウは鏡子にとって、憧れていた母の真珠や父のネクタイピンよりも価値の高い存在となった。デパートの堅苦しい包装を何枚も粗雑に破って姿を現したコムパクトを慌てて抱擁する。膨らみすぎた期待に対して、それは消えてしまいそうなくらい小さかった。


「石-2」

はぁっと鏡を曇らせ、鏡子はチップをゆっくりとつまんだ。緊張と、言語化できない喜びが、ふと目線を上げた鏡に映る自分の顔を美しく見せた。チップの先にシャドウをこすらせ、鏡子は覚束ない手つきでそっとまぶたの上をなぞった。瞬時に父と母の宝物の輝きが、何故かチラと過ぎった。


「音」

タタ、ガコンガコン、タタタタ、プルルルル、プシュー、ギュ、ギュ、ドス、フゥ、ガコン、タタンタタン、タタン、ドクン、ドクンドクン、ス、ハッ、ガラガララ、ザァァ、ビュオ、「好きだ」、「アタシモ」、タタンタタン、タタン、タタ


「獏」

茫漠たる江湖を疑い続けて思った、では正解は何なのか。辿り着いた境地は彼を無にした。ただひたすらに疾走した足跡の一条が割れ、球体の世界が創られた。彼はそこに戻ってきたに過ぎなかった。それに気付いた時、彼は深い眠りから目を覚ました。



ゆっくりと、やっていけたらと思う。